
このような歴史があったかもしれません。
■緑の都
緑の都の前身となった地は、もともとはモンスターと対立して生きていましたが、帝国とかかわる中で心術の力により周辺のいくつかの民族が統合され、モンスターと共存の道を進むこととなりました。モンスターとの共存前は氷の地でしたが、モンスターとの和解により緑の地となり、帝国の庇護下に入ると共に「緑の都」と名を改めました。
そしてカラコリチアの時代になるころには、モンスターと人間がふたりでひとつの精守となり、都の象徴となる役割が生まれるほどに共存が浸透していました。しかし、千年前の事件により再びモンスターと対立することとなり、都は滅び、雪が覆う地へと変わっていきました。
■精守
緑の都を象徴し、守護する役割を持ちます。もともとは雷雪の精霊であるドゥーシューと共に戦う存在でしたが、モンスターとの共存を経て、モンスターと共にドゥーシューが荒ぶらずにすむ世界を見守る、平和の証たる役割へと変化しました。
■ラティーカとララパユ
カラコリチアの時代の精守です。精守と名乗る時は「わたくしたち」と複数で話し、ラティーカは肩にいるパートナーのモンスター・ララパユと片時も離れません。
思考が同じなわけではなく、それぞれで異なる思想は持っていました。とはいえ、心が通う存在でなければ精守になることはできず、どちらも人間とモンスターの歩む明るく輝く未来を心から願い、信じていました。
しかし、千年前の事件によりふたりの心は引き裂かれ、ララパユはラティーカを襲おうとします。最後の最後までモンスターを攻撃することを決断できなかったラティーカは、ララパユと戦おうとするドゥーシューを剣に封じ、そして自身もララパユに傷つけられそうになります。しかし、それに抗ったララパユは、片割れだけは、と彼女に「モンスターへ変じるまじない」をかけました。
それはララパユに大きな代償を支払わせましたが、ラティーカは人間でも完全なモンスターでもなくなり、モンスターに襲われない存在となります。しかし、その精神的な苦しみは、その心の在り方を大きく変えることとなりました。
なお、ふたりでひとつの存在である精守が個人名を名乗ることはほとんどなく、そして今はその名の由来を知る者もほとんどいません。
■ドゥーシュー
グリィーゼンの背負う双剣に宿る、雷雪を操る力を持った謎の存在です。千年前に精守により剣へ封じられ、モンスターへの怒りと憎しみから養い子のグリィーゼンの身体を乗っ取ろうと企んでいます。
その正体は、かつて雷雪の精霊と呼ばれた守護者でした。昔の来歴はドゥーシュー自身もよくわかっていませんが、緑の都がまだ緑の都ではなかった頃、氷の地でモンスターや環境に苦しむ人々をただ眺めるだけだった大岩が、ある時、雷雪に打たれて力と意思を得たのがはじまりです。
雪やモンスターから身を隠してくれるため、自然信仰があった当時の人々から大事にされていた大岩は、人々の危機にいてもたってもいられず、意志が生まれるや否や、人々に自分を砕いて剣を作れ、と命じました。岩は力が増す雷雪の時によく話したので、人々は『雷雪の精霊だ』とあがめ、言われる通り剣を作ります。ひとつは雪の力、もうひとつは雷の力が宿り、二つ合わせて雷雪の力を持ちました。
しかし、その剣はあまりに強大で使いこなせる人がいなかったため、ドゥーシューはさらに一肌脱いで、人間に憑依してモンスターと戦ってやることにしました。人々はドゥーシューに感謝し、共に飲み食いをします。ドゥーシューは人間と仲良くなり、普段は大岩の残りに、時には人間に宿って共に生きるようになりました。
やがて、モンスターとの共存の時代が訪れます。ドゥーシューは懐疑的な気持ちがありつつも、世代が変わっていくにつれ人々からモンスターへの警戒心はなくなり、また緑の地となった都で人々が幸せそうに暮らしているのを見て、『もうこの地に雷雪が降ることがないのなら』と、役割を終えたと受け入れます。
そんなドゥーシューを人々は忘れず、『雷雪の精霊が荒ぶらず共に楽しく暮らせる、みんなが平和な世界を守る』と誓って、『精守』という平和の象徴を作り出しました。精守はドゥーシューがよく憑依していた人間の一族であることもあり、ドゥーシューもなんだかんだで嬉しがっていました。
しかし、千年前の事件がおき、ドゥーシューは人々を守るべく、人間に宿ってモンスターと戦おうとしました、それを拒絶したラティーカによって剣の中へと封じ込められ、剣を所有する人間にしか憑依ができなくなってしまいます。
そのまま戦乱の中で剣が雪の中に埋もれてしまったドゥーシューは、依り代の岩を失ったことでかつての大半の記憶を失い、「人間に裏切られた怒りと悲しみ」「モンスターへの蓄積した憎しみ」が入り混じった存在となってしまいました。
■ブラッドの祖先
千年前、緑の都。ブラッドの祖先は精守を守護する役目を担っていました。平和な時代だったので、実際に戦うことはほとんどありませんでしたが、それでもドゥーシューの逸話を知っていた彼は、ドゥーシューと対等になりたいと剣の腕を磨いていました。
その姿を知ったドゥーシューは「感心なやつだ」と気に入り、残っていた大岩をさらに砕いて剣を作ってやりました。雷雪が落ちた時の「熱」の力がこもった剣に彼は喜び、使いこなせるようにドゥーシューに時に教えてもらいながら、鍛錬を繰り返します。
その矢先でした。千年前の事件の際、都内の対応に追われていた彼が、ドゥーシューとラティーカの元に駆けつけた時には、ドゥーシューが剣に封印されたあとでした。ドゥーシューを止めることもできず、ラティーカに封印の重荷を負わせた失意に落ち込みますが、いつかの未来を自分だけは信じよう、と自分の子孫に「熱の剣」を代々伝えていくこととにします。
その思いから、剣には彼の思念が宿った魔力がこもっており、ほんの少しだけ魂の欠片が残っているそうです。